新型VWポロ試乗 – Golfユーザーから見た室内空間と走り

VW(フォルクスワーゲン)は2018年3月20日にフルモデルチェンジした新型ポロ(AW型)を発表しました。

先代の5代目ポロ(6R型)までは5ナンバーでしたが、新型ポロは3ナンバーになり、4代目ゴルフ(1997年~2006年)並みのサイズまで大きくなりました。

近年の車はモデルチェンジの度に大きくなり、VWゴルフのような3ナンバーのコンパクトカーを好む者にとって、選択肢がどんどん少なる中、ゴルフに近づいた新型ポロはとても気になる一台。

この度は機会を得て、新型ポロを約一週間借りることができたので、VW新型ポロを詳しく紹介します。

VW新型ポロ
今回試乗した新型ポロのエントリーモデル「TSI Trendline」。ボディ側面のプレスラインが特徴的。

新型ポロの室内空間と走行性能

新旧ポロの比較は自動車専門誌に譲るとして、世界のコンパクトカーのスタンダードと言われるゴルフ(ゴルフⅥ TSI Comfortline)のユーザーとして、違う視点で紹介したいと思います。

新型ポロの最大の特長は、表1の通り、大きくなったボディサイズとダウンサイジングされた排気量1.0lターボエンジンになります。

表1 新旧ポロとゴルフⅥの主要スペック
主要諸元先代ポロ
(6R型、2016年7月)
TSI Comfortline
新型ポロ
(AW型)
ゴルフⅥ
(5K型)
TSI Comfortline
全長(mm)3,9954,0604,210
全幅(mm)1,6851,7501,790
全高(mm)1,4601,4501,485
ホイールベース(mm)2,4702,5502,575
最小回転半径(m)4.95.15.0
車両重量(kg)1,1301,1601,290
エンジン直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ直列3気筒DOHCインタークーラー付ターボ直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
総排気量(cc)1,1979991,390
最高出力kW(PS)
/rpm
66(90)
/4,400-5,400
70(95)
/5,000-5,500
90(122)
/5,000
最大トルクNm(kgm)
/rpm
160(16.3)
/1,400-3,500
175(17.9)
/2,000-3,500
200(20.4)
/1,500-4,000

室内空間

乗員スペース

新型ポロは最上級セダンのアルテオンやゴルフにも採用される「MQB」プラットフォームを取り入れて、ワイド&ローのスタイルとクラストップレベルの居住性を実現しました。

身長175cmの筆者が新型ポロの運転席に乗って、最初に感じたのがゴルフとほぼ変わらない広さ。後席はゴルフに比べて少々窮屈に感じるが、膝と前席との間はこぶし1つ分の余裕があり、特に問題はないと思います。後席に広さを求める、または人を乗せての長距離移動が多い場合は、ポロよりもゴルフをおすすめします。

なお、後席の座面と背もたれの角度がちょうど良いのか、筆者も家族にもフィットしていて高評価でした。

ラゲージスペース

先代ポロに比べて、新型ポロのラゲージスペースは大きくなりました。その広さは、何とゴルフⅥ(後部使用時、350l)と同等レベル。これなら家族4人の1泊旅行でも問題なくこなせます。

表2 新旧ポロのラゲージスペース
ラゲージスペース先代ポロ(6R型)新型ポロ(AW型)
後席使用時(l)280351
後席を倒した場合(l)9521,125

なお、家具の運搬など、いざの時はリアシートを倒して使いたいが、「TSI Trendline」の後席は分割可倒式ではありません。購入の際は分割可倒式シートが設定されている「TSI Comfortline」と「TSI Highline」の2グレードが良いかもしれません。

新型ポロ「TSI Trendline」のラゲージスペース
新型ポロ「TSI Trendline」のリアシートは分割可倒式でないので、倒すと最大2人しか乗れない。

走行性能

エンジンは小排気量の1.0l TSIエンジンのみ

新型ポロは「TSI Trendline」「TSI Comfortline」「TSI Highline」の3つのグレードがあるが、エンジンは排気量1.0lの直列3気筒DOHCインタークーラー付ターボエンジンの1種類のみ。グレード間の違いは、インテリアと装備の違いになります。

エンジンは1.0lと小排気量ですが、最新の技術力により、1.8lの自然吸気エンジンに匹敵する性能をもっているので、市街地、山道を問わず、力不足を感じませんでした。排気量1.0lでこれほどのパワーを感じられるのは、輸入車の魅力の一つとも言えます。

新型ポロの1.0l TSIエンジン
排気量1.0lと思えないパワフルのTSIエンジン

7速DSGトランスミッションで滑らかな加速

アクセルペダルを踏むと、加速とともに7速DSGトランスミッションがレーシングドライバー並みのシフトチェンジを発揮。新型ポロの切れ目のない滑らかな加速は、素晴らしいの一言。

特にトランスミッションをSモードに切り替えると、車はアクセルワークに対してダイレクトに反応してくれます。筆者のゴルフⅥに比べて、新型ポロの滑らかな加速には感動させられました。

なお、新型ポロは小排気量エンジン搭載のため、加速時の振動と音は体感的にバイクのように感じます。エンジンの吹き上がりは軽快ですが、パワーを体感できるのは4,000回転まで。マニュアルシフトで運転する時にご参考ください。

環境技術“BlueMotion Technology”

フォルクスワーゲンの環境技術“BlueMption Technology”により、新型ポロはStart/Stopシステムとブレーキエネルギー回生システムが装備され、燃料消費率は19.1km/l(※JC08モード)だそうです。

アイドリングストップ機構のStart/Stopシステムは無駄な燃料消費を抑えてくれるが、スタートはどうしても遅れます。気持ち早めにブレーキペダルを外して対応すれば良いが、一時的に停止したい場合はトランスミッションの右上にある「Start/StopシステムOFFボタン」を押せばこの機能を停止できます。

新型ポロのドライブフィール

乗り心地と操縦安定性

先代ポロは室内空間が狭いだけでなく、走行中の振動、ハンドリング時の直進安定性など、乗り心地と操縦安定性はやはり5ナンバーコンパクトカーそのものでした。新型ポロはボディサイズが大きくなり、ホイールスペースが長くなったことで、室内空間、直進安定性、乗り心地の三点でかなり向上しました。

クラスが異なるので、新型ポロはゴルフの「重厚感」が感じられないが、適度に硬い足回りと上質な乗り心地はゴルフと相通ずるものがあります。カタログに記載している「目指したのは、今の流行より次の次のスタンダードになること」を感じました。

通常走行はDモードが適切

市街地などの通常走行はDモードが適切でしょう。アクセルペダルをゆっくり踏めば、新型ポロはエンジン回転の上昇とともにスムーズに加速してくれます。加速時のシフトチェンジはショックが感じられず、筆者が乗っているゴルフⅥよりも滑らかに感じました。

追い越しなどでもう少し加速がほしい場合は、Sモードに切り替えれば小排気量と思えないスポーティな走りができます。

山道走行はマニュアルシフトで意のまま

ストレートで速く走れても良い車とは言えません。新型ポロの特性を知るため、筑波山のパープルラインでDモード、Sモードとマニュアルシフトをそれぞれ試乗しました。結論的に、山道はマニュアルシフトがもっとも楽しく走れました。

ゴルフはパワーに余裕があるので、Sモードに切り換えれば、アクセルワークだけで山道を意のままに走れました。しかし、新型ポロをSモードで短い登り坂を走ると、ほしいパワーを得る前にトランスミッションがシフトアップするため、走りにストレスを感じました。

同じ山道をマニュアルシフトに切り換えて走ると、意のままにシフトチェンジができるので、ストレートの短い山道はマニュアルシフトの方が快適に走れます。

普通に走るならDモードに切り換え、登り坂はアクセル、下り坂はブレーキで速度を調整しながら走れば、特段にギクシャクを感じられることなく山道をドライブできます。

山道走行は、普通に走る場合はDモード、意のままに走るはSモードよりもマニュアルシフトをおすすめします。

曲がる性能

市街地走行では、意識することなくカーブをスムーズに曲がります。新型ポロの最小回転半径は5.1mと先代ポロに比べて大きくなったが、片側2車線でのUターンなども特に問題なく曲がれました。

曲がる性能が特に要求される山道走行でも、足回りが適度にチューニングされていて、カーブで意識するほどのロールもなく、軽快にカーブを曲がれます。

止まる性能

試乗した新型ポロは、ブレーキペダルの踏みしろに応じて作動します。最初が甘く、最後にグッと踏み込まないと止まらないような癖もなく、市街地でも山道でも、同乗者に優しい運転ができました。

新型ポロの安全装備

フォルクスワーゲンの安全理念「オールイン・セーフティ」の下、新型ポロは「ESC」「フォースリミッター付シートベルトテンショナー」「アクティブボンネット」「エマージェンシーストップシグナル」など、多くの世界トップレベルの安全技術を標準装備しています。

その他、新型ポロの全てのグレードには以下の安全装備が標準装備されています。

プリクラッシュブレーキシステム“Front Assist”

時速約5km以上になれば、エンブレムに内蔵されたレーダーセンサーで前方の車や歩行者を検知します。もし衝突の危険が予測される場合、システムが自動的にブレーキを作動させ危険を回避、あるいは追突の被害を軽減するシステム。

プロアクティブ・オキュパント・プロテクション

車が横滑りで事故の可能性、または追突の危険性を検出すると、すぐにシートベルトのテンションを高めると同時にウインドーを閉じ、事故が起きた際に各エアバッグが最大限の効力を発揮できるよう備えるシステム。

ドライバー疲労検知システム”Fatique Detection System“

疲労や眠気による急なステアリング操作など、通常の運転パターンと異なる動きを検知し、表示と警告音で休憩を促してくれます。このシステムは現行のゴルフⅦにも装備されているが、新型ポロにも標準装備されています。

6エアバッグ

ノート、アクアなど、多くの国産コンパクトカーは運転席と助手席にエアバッグが装備されていても、後席のカーテンエアバッグはオプションまたは装備できない(設定なし)。ポロは旧型から6エアバッグが標準装備。

ポストコリジョンブレーキシステム

先代ポロの後期型でも搭載されているこのシステムは、衝突や追突時の衝撃をエアバッグのセンサーが検知すると作動します。自動でブレーキをかけて時速10km以下になるまで減速させ、対向車線へのはみ出しなどによって起こる多重事故の危険を低減させます。

感想

一週間近くの試乗を経て、ゴルフⅥユーザーとして、新型ポロのポテンシャルの高さをたっぷり感じました。

新型ポロは1.0lの小排気量エンジンですが、7速DSGトランスミッションとの組合せにより、市街地はもちろん、山道でも快適に走ります。今までのポロは女性ユーザーが多かったが、新型ポロはボディサイズが大きくなったことで、筆者のようなスポーティコンパクトカーを求める男性ユーザーも満足できる車だと思います。

新型ポロを経済的観点から見ると、エンジンのダウンサイジングで燃費が向上するだけでなく、自動車税も安くなるので、経済性でも優れています。また、安全装備も充実しているので、200万円台前半の国産コンパクトカーに比べて、コストパフォーマンスはかなり高いと思います。

特に子どものいる家庭は価格面で軽自動車を選びがちですが、安全性を考慮すると、世界トップレベルの安全技術を標準装備する新型ポロの方が安心だと思います。

最後に余談ですが、普通のポロのポテンシャルがここまで高いと、普通のポロをベースに開発された新型ポロGTIの走りはさぞ楽しいだろうと想像が広がる今日この頃です。